限界の外側へ。|代表理事 津嶋勇士インタビュー

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FOUNDER’S STORY / 01

限界の、外側へ。

寄り道が、居心地のよさのヒントをくれた。

一般社団法人やまねこふくし創造舎 代表理事 津嶋 勇士 TAKEHITO TSUSHIMA
緑の壁を背景に立つ代表理事の津嶋勇士さん
誰もが、その人のペースで呼吸できる場所を。

PROLOGUE

心がほぐれる部屋から。

「ここ、落ち着きますね。」

そう声をかけると、津嶋さんは少し照れたように笑って、「植物が勝手にいい空気をつくってくれるんですよ」と答えてくれた。

取材の日、案内されたのは、やまねこふくし創造舎の奥にある小さな部屋だった。

大きな窓からやわらかい光が入り、棚の植物たちはその光をうれしそうに受けていた。木のテーブルは手ざわりがよく、椅子に座ると自然と深く息ができる。ライトの明かりは少し低めで、「ここで話していいですよ」と語りかけてくるようだった。

そんな心がほぐれる空間の中で、代表・津嶋勇士さんとのインタビューが始まった。

01

THE ORIGIN

福祉の道を歩き始めたきっかけを教えてください。

最初は、沿岸の町役場で福祉担当として働いていたんです。行動障がいのあるお子さんの受け入れ先を探していましたが、どこに相談しても「難しいですね」と言われるばかりでした。行き場のない現実が、目の前にありました。

窓口で、お母さんが泣き崩れた日のことは忘れられません。そのときに思ったんです。「行政の仕組みの中だけでは届かない支援がある」と。

できることが限られているなら、“限界の外側”に目を向けないといけない。その気づきが、最初の一歩でした。

02

THE REALITY

災害支援の現場で、どんな“現実”を目の当たりにしたのですか?

大きな台風が町を襲った年がありました。避難所で支援に関わったとき、“安心”がなくなると、人はこんなにも不安になるのかと痛感しました。

災害が起きると、これまで福祉の対象でなかった人たちも突然、支援が必要な立場になります。その混乱の中で、障がいのある方の支援が一気に手薄になってしまう。「いちばん守られるべき人が、いちばん守られない状況」が生まれるんです。この構造は、本当に恐ろしいものです。

福祉の中でも、障害福祉は絶対数が少ないぶん、高齢福祉・児童福祉に比べてどうしても“優先順位が後ろ”にされてしまう。声を上げなければ聞こえない。必要だと言わなければ、必要としてもらえない。その現実を知りました。

そんな中、民間の支援団体の人たちが、誰に頼まれたわけでもなく淡々と動いている姿がありました。“ないなら、自分たちでつくろう。”その姿勢に強く影響を受けたんです。足りない資源は、自分たちで生み出していくしかない。その考えが、今のやまねこにもつながっています。

03

BEING TOGETHER

相談支援の仕事から、どんな支援観が生まれたのでしょうか?

知的障がいのある方の相談支援や、発達障がいの子どもたちと関わる中で、“支援とは助けることではなく、いっしょにいることだ”と感じました。

言葉にならない想いに耳を澄ませ、小さな「できた」をいっしょに喜ぶ。その積み重ねが、「ここにいていい」と思える安心になる。

支援は技術以上に、関係のあたたかさなんだと思いました。

作品が並ぶ棚の前に立つ津嶋勇士さん
守るだけではなく、つくる。足りない資源を、地域の仲間と形にしていく。
04

KEEP THE LIGHT

「陽だまり」を引き継ぐ決断は、どのように生まれたのですか?

「多機能事業所 陽だまり」が閉所の危機にあると聞いたとき、胸の奥がざわつきました。この場所が消えてしまえば、行き場を失う人がいる——そう考えたら、動かずにはいられませんでした。

職員の確保も、資金も、手続きも初めて。でも、“守りたい”という気持ちがすべてを押し出してくれました。

誰かがつないだ灯りを絶やさないこと。それも、支援のひとつだと思っています。

05

LAW & WELFARE

行政書士としての経験は、福祉にどうつながっていますか?

令和2年に行政書士として独立し、成年後見の仕事にも携わるようになりました。

制度だけでは人は幸せになれない。
でも、制度がなければやさしさは続かない。

そのあいだをつなぐ役目が、自分の仕事だと思っています。令和7年には行政書士会北上支部長になり、法と福祉、その両方から地域を支える活動を続けています。

06

THE NAME

「やまねこふくし創造舎」という名前に込めた想いを教えてください。

宮沢賢治の作品に出てくる“山猫”が好きなんです。自由で、少し不器用で、でもどこか誠実で。昔からその存在に惹かれていました。

そしてもうひとつ、心の中にいた“やまねこ”がいます。対馬に生きるツシマヤマネコ。森の中で静かに命を守るように生きる姿は、福祉という仕事のあり方と重なるものがありました。

それに、ツシマヤマネコの「ツシマ」という名前は、自分の苗字とまったく同じ読みなんです。特別な理由があったわけではなく、ただ、自分にとっては昔から“縁がある名前”のように感じていました。守ること、つなぐことを大切にしたいという思いも、そのあたりに根っこがあるのかもしれません。

だからこそ、枠にとらわれず、その人がそのままでいられる福祉をつくりたいと思いました。やまねこふくし創造舎は、“その人のペースで呼吸できる場所”を形にする法人です。

生活介護、放課後等デイ、児童発達支援——ひとりひとりの小さな光が、ちゃんとそのまま輝けるように。そんな願いを込めて、居場所を丁寧につくっています。

07

WITH FRIENDS

事業が一気に拡がっていった理由はどこにあると思いますか?

2024年にFONTOLABOを立ち上げ、「福祉にデザインの力を」という新しい試みに挑戦しました。放課後等デイ「iBLENDぴぃす」は、アナログゲームや音楽療法が特徴の事業所です。子どもたちの「できた」がそこで育っています。

2025年にはグループホーム「ソラノサト」も誕生しました。空と光をテーマに、その人らしい時間が流れる場所を目指しました。

事業が広がった理由はひとつです。
仲間の存在です。

陽だまり時代から支えてくれたスタッフ、やまねこの理念に共感して飛び込んでくれた新しい仲間たち。その人たちが、やまねこを前に進めてくれました。

私ひとりでは到底できなかったことが、仲間と歩くことで自然と形になっていきました。

08

PHILOSOPHY

あなたが考える“理念”とは、どんなものですか?

理念を信じ、日々の支援で体現してくれる仲間がいること。これ以上の心強さはありません。

理念は紙に書くものではなく、
それを生きる人の姿によって、本物になる。

そのことを仲間たちに教えてもらいました。

09

THE FUTURE

やまねこふくし創造舎がこれから目指す未来を聞かせてください。

「ここにいていい」と思える場所を、もっと増やしていきたいです。

子どもも大人も、支援する人もされる人も、誰もが自分のままでいられる社会。それは特別なことではなく、“人が人を想う”という、ごく自然で美しい文化だと思っています。

やさしさが巡る社会を信じて、これからも静かに、丁寧に、一歩ずつ歩いていきたいです。